クソブログハラスメントについて
たまたま目に入ったので読んでみたのだ。ザザッとちょっとだけ、軽い感想を書きました。
小さい子供をむやみに連れ回す親は迷惑だ、子供にとっても良くないことである、度が過ぎる親のふるまいはベイビーハラスメントだ、というような趣旨のことを書いていらっしゃる。
なるほど筋は通ってる――
かに見えるじゃん?
でもさ、冷静に考えてみて、ここで書かれているようなベイビーハラスメントと呼ばれるほど酷い親の振る舞いを見た、あるいは迷惑をこうむっていると感じていらっしゃる人はどれだけいるんだろうか。
はたまた、乳幼児を無意味に連れ回し歩き回らせる親なんてこの世いるのだろうか。いやいない。*1
僕の感覚だと、「ごくごくまれに非常識な親御さんがいらっしゃいますよね」くらいのもんじゃねって思うんですけど。僕が『地下室の手記』の書き手の陰キャみたいに引き籠もりっきりだから世情に疎いのかしら。
「子育てをしていない人は、物を言う権利さえないのですか。」なんて書いているところがまったく的を得ていないことで、うーん、たとえば「僕童貞だけど、非処女はみんな淫乱だと思う」というような趣旨の記事を書いてほうぼうから文句を言われて、あげく「童貞は物を言う権利すらないのですか」なんて言っちゃうのと同じだよね。え、違う?僕童貞なんで難しいことわかんないや……
書いていることが、「想像上の親」ないし「ツチノコなみにレアな非常識な親」を、さも子連れの親一般にありがちなことであるかのような書きっぷりをしちゃってるから、「子育てについてなにも知らないんじゃないですか、なに知ったようなこと書いちゃってんですか」と指摘を受けているということでしょう。物言ってもいいけどもうちょい想像力働かしてみたら?世の子連れ親子の実態を知ったら?ってかんじかな。
「親の我慢できない欲望」だなんてご大層なことを書いていらっしゃいますが、そんな欲望のままに振舞っている親なんてどれほどいるのか? 子のいない人間だって、多くの人は社会のなかでわきまえたうえで自分のやりたいことをしているでしょう?
他人に迷惑かけてでも自分のやりたいことやるんだよ~なんて奴は、子のいるorいないに関係なく非難されるべきであって、あえて「親が」という書き方は論理的にオカシイ。「親」ではなく、「欲望を我慢できない人間全般について」と書くべきであって、論理的でないし現実的でもない。書き手が子供嫌いゆえに(かどうかは知らないけど)、ことさら親のふるまいに対して入れ込んだ書き方をしているように見える。
「もし世の中がベイビーハラスメントするような非常識な親ばかりになったらイヤだな」と思うような人は、ベイビーハラスメントという言葉に賛同するのかもしれないね。けどなぁ、なにがベイビーハラスメントにあたるだろうかなんて考えるより、子のいない人間が子のいる人間になにをしてやれるかを考えたほうがよっぽど世の中のためだと思うんだけど。
なんでこんだけ否定的なことを思ったかというと、「ハラスメント」という言葉を、「自分が嫌いで排除したいものへのラベリング」のような使い方しているのが気に食わないんだよね。
記事へのコメントなんかで「子育てしてから言え」という突っ込みがたくさん入っているのは、主に、
「どうしても赤ちゃんを連れて行かなければならない」という状況は、そう多くないように思います。
と書かれていることに対して言いたいんだと思いますけどね。誰だってなにかしら必要があるから出かけてるんだろうよ。それらが全部、親の欲望の発露だとみなしちゃってるところに大いなる誤りがあると思うのだ。
「親のワガママで子供を連れ回している」という偏見から出発して、自分の気に食わないものをハラスメントだと名づけて、体よく排斥したいだけのように思えるんだが。違うだろうかね。極端なこというと、「子連れの親がなにかとうるさくて見たくなもない、家から出てきて欲しくもない。自分にとって嫌なものだ、ゆえにハラスメントだ」としているんじゃないか。
さらに、子のいる親に対して「ハラスメントになりうるようなことはするなよ」と言って、自分の目に入るところに出てこないでもらうことを強要したい。そんな意図が見え見えなのだ。不快感の理由はそれだよね。
においが気に入らないからスメルハラスメント、キモイ告白されたから告白ハラスメント、ルーザーさんがキショいことばっか書いているからルーザーハラスメント。いろいろあるけれど、本当になにもかもハラスメントなのだろうか。
ふたたび書くけど僕がこの記事で書いていることに否定的なのは、ハラスメントという言葉の濫用ではないかと思えること。ハラスメントだと言って他人を排斥する理由に あんま軽々しく使ってほしくねえよなあって思うがためです。気に入らないものを片端じから排斥した世の中がどうなるだろうかとか、あんまり考えていないのでしょうね。まぁ嫌いな奴にどっかいってホシイと思うのは人情だから、ちょっぴり同情はします。
「セクハラ」が流行語対象になって全国的に言葉が広まったのが1989年のことだそうで。その後、セクハラをめぐる裁判のなかで、男性従業員のイヤラシイ言動がもとで女性従業員の仕事に支障が出るレベルの場合をセクシャルハラスメントだと認めて、使用者側(雇う側)に是正の責任があるとされた、ということなのだけど。労働災害と同じ扱いだとされてね。それは、女性の側がずっと不当に我慢を強いられていたから出てきた概念であったはず。
それに対して、子連れ親子から不当な我慢を強いられている人はどんだけいるものか。もし仮に、本当に世の中の多くの人が子連れ親子のマナーについてなんとかあらためてもらいたいと感じているようであれば、そのとき初めてベイビーハラスメントだとか言っていいんじゃないかと思うんだけど。
って書いてて思ったんだけど、ハラスメントという言葉を使って嫌がらせをすることはハラスメントハラスメント、略してハラハラっていうのかな???わかんね~
ところで、実態がどうであるかに関わらず自分の気に入らないものについての幻想をブログに書き立てたり、人民を煽ったり、炎上ブログとか書いちゃったりするってがいまの世の中ではよくあることと思います。
そんなものを読んで嫌ァな思いをさせられることをクソブログハラスメントって呼ぼうと思うんだけど、どうでしょう。
ベイビーハラスメントはこの世に滅多にないことだと思うんだけど、クソブログハラスメントはそこらじゅうにあるよね!
全部消えねえかな!
*1:反語