トロトロ・ッコ問題
愛と恋も手に入らない人生に嫌気がさして、トロッコでこの世のすべての人間を轢き殺してやることにした。トロッコ問題だ。好きだったひとからからは、ある日とつぜん返事がこなくなった。そのひとのSNSを見ると、あらゆるひとにリプライを飛ばしている。あのひとは、多数の人間を殺すことよりもひとりの人間を殺すことに決めたのだろう。そんなことを考えながらトロッコに乗りこんだ。
「トロッコに火は入っているか」
これは失恋なのだろうか。愛を失ったとき、どうして「失愛」とは言わないのだろうか。「恋」は相手への好意を持っている現在形の状態で、「愛」は相手への思いがあったのだと思いをはせる過去形なのだ。愛は、つねに、あれは愛だったのだな、というふうに過去のものとして確認するもの。現在あるのかどうかは確認できないものだから、現在形として失うことはできない、ゆえに現在形として使う失愛という言葉は存在しないんだ。トロッコはトロトロと進んでいく。
涙が流之介「トロトロ・ッコ」
生きていたくないですね。めちゃくちゃしんどいときにも、だれも助けてくれない。どうしてだろう。そのつど、やっぱ、人生はおのれの気合いと鉄血をもって生き抜いてくもんやな、という気持ちがあらたになる。孤独だよ。孤独感は空腹に似ていて募るとイライラしてくる。イライラに呼応すしてトロッコは速度を増して行く。そろそろひとを轢き殺せる速度に迫ってきた。
「トロ、蟷螂の、斧」
最初の分岐点だ。左の路線には作業員が5人で作業をしている。僕をハブって飲み会をしていた、全員嫌いな奴らだ。右の路線には作業員がひとりで作業をしている。イキリツイートが目障りで、こいつもきらいな奴だ。どちらの道を進むか?簡単な問題だ。6人まとめて轢き殺す。今宵のトロッコには血に飢えている。
とろ火で3分
トロッコは進撃し、忌々しい消費税を発明した人間をバラバラにし、くだらないトロッコ問題を発明した人間を八ツ裂きにしたところで気を良くして歩みを止めた。僕は消費税とトロッコ問題が大嫌いなのだ。