アサヒ死ンブン

死骸ブログ

SNSを辞めろ

ティンダーで
  マッチいっぽん
    火事のもと

これは僕が作った句なんですが、江戸時代にスマートホンがあったなら間違いなくエロ・色恋川柳集『誹風末摘花』に収録されてたろうなって名句じゃないですか?

ティンダーってのは要するに出会い系アプリで、次々と出てくる相手(異性に限定したものでなく性的指向の設定ができる)の写真を見て、気に入ればLIKE・気に入らなければNOPEの評価をつけ、相手も自分をLIKE評価したならばマッチが成立、そうするるメッセージのやり取りができるようになり、あとは良いようにメッセのやり取りで仲良くなり煮るなり焼くなり好きにしろってわけだよ。無料版にはLIKEの数に制限があり、課金すると制限がなくなる。うさんくさいアルゴリズムだよね。今日はこのティンダーを含め、SNS的な繋がりがいかにしんどいかって話がしたい。別にマッチした女から返事がこないから八ツ当たりで書いているわけではない。

まず、おもしろい女はティンダーなどやっているひまがないはずであるから、ティンダーにはおもしろい女はおらず、原理的にティンダーでおもしろい女とマッチするわけがない。まぁ、おもしろいかどうかはひとによるから、これは異論があるかもしれない。いないと思うけど。まぁそんな冗談はどうでもよくって、ひとの関係について考えたくって、人間関係ってのは本来、お互いの気に入る部分と気に入らない部分を受け入れたり拒絶したりを繰り返して妥協したり、より良い関係を築けたり、やっぱりだめだったりしていくわけジャン。最初はムリだと思っていた相手が受け入れられるようになることがあるのは、会話をして弁証法的に関係を築いていくものだからだろう。それをマッチするかどうかという対幻想に訴えて始めようというのがまず僕にはムリっぽく、さらにいうとメッセージのやり取りもリプライのし合いも会話ではない。ティンダーだけじゃねえや、ツイッターでもミクシーでもなんでもいい、インターネットのSNSサービスにおいて文字列を額面的にしか受け取れない"ターン制"の応対を繰り返すのは本当に疲れる。マッチした女との応対が噛み合わないことへの八ツ当たりで書いているわけではない。

対面あるいは電話での会話はリアルタイムで相手の思考を書き換え合う行為だから、パーソナルスペースのように相手によって許せる(物理的ではない)距離感が違ってくるけれど、距離の取り方を変えることで付き合い方を変えることができるわけだ。嫌いな相手とでも、"それなり"の付き合いができうる。が、SNSでは言うべきこと文字化されて、しかも受け答えに"ターン制"を強いられることでどんな相手ともフラットな対応をしなければならない。いやになったらブロックあるいは無視することはできるけれど、そこに"それなり"性はなくて、断絶が生まれる。会話も一見お互い相手の言うことを聞いて返事を考えるわけだからターン制っぽく思えるけれど、相手の言うことを聞きながら・あるいは自分がしゃべりながら話す内容がどんどん書き変わっていくところにリアルタイム性があって、このリアルタイム感覚を共有できる相手とは会話が弾んで楽しみが生まれるのだと思うのだ。まぁ、逆にいやな会話をブロックできないのがリアルタイム会話のしんどさなのだろうけど。僕はツイッターでムリな奴を見かけたら「キモッキモッキモッ」って言ってからブロックしているよ。具体的には百田尚樹と恋愛工学を読んでいる奴だね(これは悪口だ)。決してマッチした女との趣味が合わないことへの八ツ当たりではないよ。

ターン制ってことでいうと、インターネット以前の手紙のやり取りも同じような祖語というかうまくいかなさってのあったと思うんだよね。太宰治の往復書簡体小説『風の便り』はそのうまくいかなさを揶揄した内容だと思うんだけど、僕は手紙のやり取りしたことないし、ほかにエビデンスはないわ。ちなみにティンダーで太宰治好きの女とマッチしたことはないですね。別にしたくもないけど、八ツ当たりではないです。

そして、あらゆるテクストにはコンテンツとしての側面とコミュニケーションとしての側面があり、SNSのプロフィールに好きなものを書きたくなくなったり、本当に好きなものについて書きたくなくなったのは、ツイッターなんかでこの「コミュニケーションの側面」ばかりに血道を上げている奴らを見るのが心底イヤになったからなんだよな。ムリな形態のメディアで好きなものについて消費的なコミュニケーションを取るのは、もう、地獄的に嫌いだね。これは八ツ当たりだ。インターネットには嫌いな奴が多すぎる。

というわけで、フォローだとかマッチだとか繋がりをON/OFFでしか見られないbooleanな関係がときどきすごいしんどくなるわけだね。それに対して、アカウントをしょっちゅう消してすぐ繋がりが希薄になるくせに、よみがえるたびにちゃんと連絡くれるゾンビみたいな女の子も何人もいて、そういうひとは大好きなんだよな。きっと彼女たちはSNS的な繋がりとはちがう関係性を持ってくれているんだな、と感じられる。ゆえに好き。まぁ、ゾンビちゃんたちは僕のことを好きになることはないんでつが(爆笑)