アサヒ死ンブン

死骸ブログ

【読んだ本メモ】大澤めぐみ『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』(角川スニーカー文庫)

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プロローグ・エピローグに挟まれて、四人の高校生男女の視点が切り替わってひとつの物語が構成されるライトな青春モノノベルだが、登場人物の視点の切り替えからのギャップの生み方が上手く面白い。著者の文体の特徴なのだろうけれど、文語調の言葉が織り混ざるのが個人的には好きなところだ。口語と文語が混ざった違和感がありそうなところだけど、全体として統一感があるのでヘンテコにはなっていないような。細かい言葉なんぞ気にせずとも物語の展開がすらすら進むので読みづらいことはなかった。青春したいな?拙者はしたいぞ?という気持ちになっていく。

それぞれの視点が切り替わることでギャップを生むという上手さでいうと京極夏彦の小説でもそういうの多用されているね。最初の登場人物の一人語りが、あとから別の人物の話を総合するとまったく違った内容として覆される。芥川龍之介の「藪の中」とかもそうだよね。