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死骸ブログ

【読んだ本メモ】メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(小林章夫訳 光文社古典新訳文庫)

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ある科学者によって見るも醜くく生み出された人造人間が己の生に絶望して復讐に狂う怪異譚。フランケンシュタインが化け物の名前じゃないことは知っていたけども、こいつ普通にしゃべれるんだ!って読んで初めて知りました。書簡体小説で、作品の構造も入り組んでいる。映画などに翻案されまくってるからなんとなくなイメージが先行しちまっているのだな。
原作のこの小説のフランケンシュタイン博士は決してマッドサイエンティストなわけでなく、好奇心と純粋な科学的向上心のもとで命を生み出してしまった。ところが生み出した人造人間が醜いばっかりにビビって放り出しちゃうんだな。自我を得た化け物はなんとか人間の仲間入りできないものか悩み、努力し行動するわけだけども、誰にも受け入れられず絶望し、凶行に及ぶ。こうなったらもうただひとり自分を生み出した科学者に頼るほかないと、フランケンシュタイン博士に自分の伴侶を作り出せと迫るが結局叶わず、復讐の鬼と成り果て、フランケンシュタインも自分の家族を殺されたことで怪物を滅ぼすべく決意する。メイン登場人物の誰に感情移入するかというところで読み方感想が変わってきそう。Fateのフランはこの化け物の伴侶設定でしたっけ?アポクリファを途中までしか見ていない非国民だもんでね。
読みながらフランケンシュタインにも化け物にもおまえらもうちょいやりようがあったんじゃないか、と思いながら読んじゃうのはたぶん人ごとだからそんなふうに思えるようなもので、たとえば自分が善意で生み出したもの・作ったものが悪用されたりしたら、とんでもない葛藤に悩まされるだろうな。そんな読み替えのできる要素もあるように思う。
このあと読んだ批評理論入門の本ではこの作品を取り扱っていろんな読み方を紹介していたので、併せて読むといっそう楽しめた。